機械要素とは?どんな種類があるの?

このページでは機械要素についてご説明します。

機械要素とは

 機械要素とは、その名の通り機械の要素、すなわち機械を構成する部品のことです。機械は分解すれば部品になりますが、機械要素は「機械を構成する最小の機能単位」のことで、ボルトやベアリング等、ある程度規格化されている部品を指す場合が多いです。機械要素部品、要素部品、機素とも言います。

 機械設計をする中で、ボルトの山や、ベアリングの形状を設計することは特殊な例を除いてほとんどなく、多くの場合はJISやカタログから選定することになります。規格化された機械要素部品を選択することは以下のメリットがあります。

①性能が保証されている

②細かい設計の必要がないため設計時間短縮につながる

③大量生産されているため価格が安価である

④メーカーが違っても互換性がある

 以上の通り、規格化された機械要素部品を使用することは多くのメリットがありますが、選定自体は設計者が実施する必要があります。そのため、機械要素にはどのような機能を持つものがあるのか、どのように使い分けるのかを正しく理解することで機械設計スキル向上に繋がります。以下に機械要素の8要素とそれぞれの代表的な部品についての概要をご説明致します。

機械要素の種類一覧

  1. 締結要素
    • ボルト、ナット
    • リベット
  2. 伝達要素
    • 歯車
    • タイミングプーリ、タイミングベルト
  3. 流体伝達要素
    • チューブ、ホース
    • 継手
  4. 密封要素
    • パッキン、ガスケット
  5. 案内要素
    • 軸受け
    • リニアガイド
  6. 制御要素
    • リレー
    • PLC
  7. エネルギーの変換要素
    • エアシリンダ
    • トグルクランプ
  8. 緩衝要素
    • ダンパー、クッションゴム

締結要素

 締結部品は複数の部品を締結(固定)するための部品です。英語でFastener(ファスナー)といいます。代表的な物は「ボルト・ナット」です。山が切られている部分のみを指して「雄ねじ・雌ねじ」とも言い、総称して「ねじ(英語:Screw)」と言います。ボルト・ナットは互換性が非常に重要なことから、ねじ山の形状、外径、頭部形状など様々な規格が定められています。材質は金属がほとんどですが、樹脂・セラミックス製も一般に流通しています。用途も部品の固定だけでなく、位置調整や推力を利用したプレスなどにも多用されます。

 ボルト・ナットが取り外し可能な部品であることに対し、「リベット」はかしめて塑性変形させるため簡単には取り外しができない締結要素です。完全に脱落するリスクがボルトより低いため、鉄橋や航空機に使用されます。またナットが必要ないため、裏側に手や工具が入らない場所などでも使用されます。

伝達要素

タイミングプーリ(写真:株式会社椿本チエイン

 伝達要素は動力(モーターやエンジンなど)で発生させた運動を部品に伝達させたり、部品から他の部品に運動を伝達させることに使用します。主に軸の回転を他の軸に伝達させる場合に使用されます。代表的な部品には「歯車(英語:Gear)」があります。一口に歯車と言っても様々な種類がありますが、平歯車、かさ歯車、ラックアンドピニオンが専用機や治具ではよく使用されます。歯車は駆動側(1次側)の歯車と従動側(2次側)の直径を変えることにより回転速度の減速や回転力(=トルク)の増幅を行うことができます。

 歯車は比較的軸間距離が短い場合に使用されるのに対し、「タイミングプーリ」「タイミングベルト」は軸間距離がある程度長い場合に使用されます。またタイミングプーリ、タイミングベルトは歯車のようにかみ合い部分の隙間で生じる遊び(=バックラッシ)が無いため、位置決めの用途で頻繁に使用されます。タイミングプーリ、タイミングベルトも 駆動側(1次側)と従動側(2次側)の直径を変えることにより回転速度の減速や回転力(=トルク)の増幅を行うことができますが、歯車ほど大きな減速比を与えることは困難です。

流体伝達要素

継手(写真:株式会社日本ピスコ

 流体伝達要素は液体や気体の輸送に使用されます。自動機・治具においては、コンプレッサで発生させた圧縮エアを空圧機器(エアシリンダなど)に送るために使用されるケースが多いです。各種流体の輸送には「チューブ(英語:Tube)」や「ホース(英語:hose)」が使用されます。一般的には単一材料で製造された管をチューブ、複合材料で製造された比較的柔軟な管をホースと呼び、総称して「配管」と呼びます。輸送される流体の種類や圧力により、それに合った材質を選定する必要があります。また機械に配置する際の曲げRも考慮する必要があります。高圧ガスや大口径の配管には金属配管が使用されます。

 上記ような配管の接続に使用される部品が「継手(英語:Fitting)」です。継手も配管同様さまざまな種類があります。形状の分類としてはストレート(直線状に接続する継手)、エルボ(90°で接続する継手)、チーズ(T字に分岐させる継手)などがあります。 自動機・治具に使用される圧縮エアのチューブ配管には「ワンタッチ接手」と呼ばれるチューブの接続、取り外しが容易な継手が頻繁に使用されます。これら継手の接続用ねじ部には「管用ねじ(くだようねじ)」いうテーパー形状のねじを使用することで流体が漏れることを防ぎます。

密封要素

ガスケット(写真:ニチアス株式会社

  密封要素は配管内の流体や潤滑油の密封に使用され、シール部材やシーリングとも呼ばれます。動く場所に使用されるシール部材を「パッキン(英語:Packing)」と言い、エアシリンダの受圧板や身近なところでは水道の蛇口に使用されます。動かない場所に使用されるシール部材を「ガスケット(英語:Gasket)」と言い、継手や密封タンクなどに使用されます。なお、O型のパッキンとガスケットを総称して「Oリング」と呼ばれることも多く、運動用Oリング=パッキン、固定用Oリング=ガスケットのことです。

案内要素

リニアガイド(写真:THK株式会社

 案内要素は回転運動や直線運動の運動方向を安定化、スムーズにして速度や・位置決め精度を上げたり、摩擦を低減させて小さな力での運動を可能にする目的で使用されます。回転運動の案内要素には「軸受け(英語:Bearing)」があります。もっとも一般的なベアリングは「玉軸受け(ボールベアリング)」で、軸受け内部に金属ボールが円周上に組み込まれており、それらが転がることでスムーズな回転運動を可能にするものです。軸受けにはこれ以外にもさまざまな種類がありますが、多くはISO,JIS等でサイズが規格化されています。

 回転運動の案内に使用される塾受けに対し、直線運動の案内には「リニアガイド(英語:Linear guide)」が使用されます。リニアガイドは主にレールとブロックで構成され、ブロックはレールに沿ってがたつきなくガイド(案内)されて直線運動をします。ブロックの内部には多数の金属ボールが組み込まれており、ロれらが転がることでスムーズな直線運動を可能にしています。リニアガイドは軸受けと比べて統一的なサイズ規格がなくメーカーごとに特徴的なラインナップをそろえています。

制御要素

PLC(写真:株式会社キーエンス

 制御要素は機械を制御するのに使用する電機部品を指します。自動機においては「リレー(英語:Relay)」が代表的な要素となります。リレーは電気信号を受け取って電気回路の開閉を行い、その先の回路に比較的大きな電流を流す目的で使用します。よくある使い方はワークの有無を検知したセンサーからの電気信号を受け取って回路を閉じ(または開き)、ランプに電流を流して点灯させる、といった使い方をします。

 上記のようなリレーを小型化・集積し、演算機能を持たせたものが「PLC」です。PLCはProgrammable Logic Controllerの略称で、コンピューター上で電気回路を模した形式(ラダー図)で機械の動作をプログラミングをすることができます。複雑な制御を与えたい自動機ではリレーのみでの製作は困難となるため、PLCが頻繁に使用されます。なお八田機械ではキーエンス社製のPLCを使用した自動機の設計・製作も承っております。PLCは三菱電機の商品名である「シーケンサー」の名称で呼ばれることも多いです。

エネルギーの変換要素

エアシリンダ(写真:SMC

 エネルギーの変換要素は動力の向きや大きさを変換することでエネルギーを利用しやすくする要素です。代表的な要素は「エアシリンダ(英語:Air cylinder)です。エアシリンダはコンプレッサで発生させた圧縮エアの圧力(単位:MPa)を推進力(単位:N)に変換する機械要素です。ワークの保持や部品の圧入、曲げ加工など、非常に汎用性の高い機械要素です。シリンダの径が大きいほど得られる推進力も大きくなります。レギュレータや流量調整弁を使用することで推進力や速度の調整も可能です。

 ワークの保持の用途では「トグルクランプ(英語:Toggle clamp)」も多用されます。トグルクランプはトグル機構を利用したワーク保持用部品で、ハンドル部分の操作により数倍~数十倍の非常に大きな出力を得ることが出来ます。ハンドルの代わりにエアシリンダを搭載することで自動化に対応可能なタイプのトグルクランプもあります。

緩衝要素

ダンパー(写真:スガツネ工業株式会社

 緩衝要素はエネルギーの吸収の為に使用される機械要素です。代表例としては重量物や高速で移動する物体の衝撃エネルギーの吸収の用途で使用される「ダンパー」や「クッションゴム」があります。具体的にはドアストッパやエアシリンダの前進端または後進端で使用されるケースがあります。緩衝要素は機械への負荷低減や、使用者の安全のために設置されます。

まとめ

 今回は機械要素の概要についてご紹介させていただきました。要点をまとめると以下の通りとなります。

  • 機械要素には8つの種類がある
  • 規格化された機械要素部品を使用することには多くのメリットがある
  • 機械要素の特性を知ることは機械設計スキル向上に繋がる

 八田機械では今回ご紹介した部品をはじめとする、様々な機械要素部品を使用した機械設計・治具設計の実績がございます。機械設計に関するご相談はお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

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